旅14日目

ただいま、ストックホルムからの飛行機から降り、ロンドンへ向かうStansted Expressに乗っているところです。

まず、これを言わなければならないだろう。ストックホルムの24 Hour Drone Partyは快挙である。当初ボクがイメージしていたのは、12人のプレイヤーがそれぞれ2時間あたえられ、まる一日かけてイベントを構成するというものであった。ところが(これはMark Wastellから教えられていたことなのだが)、まずは12人が1時間ずつ演奏し、それを2セット繰り返すというものだった。23日(土)午後4時開始、24日午後4時終演である。ここで重要なのが、あるミュージシャンから次のミュージシャンへのバトンタッチの行い方である。会場が比較的広く、12人のミュージシャンのセットが全員分配置可能なため、バトンタッチをするにも演奏が途切れることなくシームレスに進めることができるのである。よって、ボクも他のオーディエンスも人間であるため、すべてを聴きつくすことはほとんど不可能に近い行為なのである。もちろんバトンタッチとてただ闇雲にして言い訳ではない。バトンタッチされる側は、バトンタッチしてくれるミュージシャンの演奏に水をささない形で行わないといけないのだ。それぞれの技能がここでも試されるのは言うまでもないだろう。

しかし、一体誰がこんなことを考えついたのだろうか? 凄まじいとしか表現のしようがない。また、オーディエンスもボクが予想していたよりも遥かに多かった。24時間ぶっ通しなのだから。ある意味、集中力の問題というよりも、体力の問題である。

しかし体力の問題さえ主催者側は考えていてくれたみたいで、椅子を設置する他に、会場にはスポンジ上のマットが部分的に敷き詰められていて、そこでごろ寝をすることができるようになっていた。ボクは限界の朝6時ごろまで一睡もせずにいたが、他のオーディエンスはとっくに熟睡だった。中には、ベッドのマットを敷くものや、寝袋を持参で会場に突入するオーディエンスも存在していてびっくりした。

客の国籍も様々で、ボクが知り合った少年たちは、最近この種の音楽に興味を持ち出して、はるばるノルウェーからやってきたそうだ(ボクもはるばる日本から飛行機に乗ってきてしまったが...)。

とりあえず、ラインアップは以下の通り。
Mark Wastell
Jean-Louis Huhta
Joachim Nordwall
Dead Letters Spell Out Dead Words (Stephen O’Malley)
BJNilsen
Jacob Kierkegaard
Henrik Rylander
Hild Sofie Tafjord
Mika Vainio
C Spencer Yeh
Carl Michael von Hausswolff
Hildur Gudnaottier

電車の中で書いているから、もしかしたらミススペルがあるかも...個人的にはJean-Louis Huhtaの演奏がとても興味深かった。ギターとラップトップを組み合わせた演奏で、トーンが微細ながら確実に変化していくさまが面白かった。それと、『ワイヤー』誌の写真で見たことのあるHildur Gudnaottierもチェロとラップトップの意外な組み合わせが面白かったのだが、チェロの方があまり色彩に富んだものとは言えなかったのがちょっと残念か。しかし、C Spencer Yeh(これで彼の生演奏を聴くのは3回目)はバイオリン一本にエフェクトをかけただけで随分と激しい、誰も真似できないドローンサウンドを出していたし、Mark Wastellのゴング(極めてアジア的な格好の楽器なのだが、本人に問い合わせてみたらそうでもないそうでびっくり。彼の2回目の演奏は午前4時からでみんな寝てたから、楽器をガンガンならしてみんなを起こせばいいじゃないか?とくだらないことを言ってしまった)もサイケ色炸裂のドローンサウンドで楽しかった。ドローンといっても、それぞれアプローチが全く異なっているので、Install 08よりも来た甲斐を感じさせてくれるイベントだったと思う。

それにしても、こういうイベントを日本ではできないものなんでしょうか。今回は友達を訪ねるのを兼ねての旅だったが、飛行機に乗らずとも、これらのミューズシャンの演奏に触れることができるイベントを、Installや24 Hour Drone Peopleみたいな大掛かりなイベントを、日本でもそろそろ作ってもいいのではないだろうか。フジロックとかサマソニみたいな商業的イベントではなくて、サウンドアートとしてのイベントを。そんなイベントが日本でも実現できるのを願う。ボクがやる??? なんてことはまぁ無理だろうから。