Charlemagne Palestine初来日

風邪気味で微熱もでていたので体のコンディションは決して良くないし、しかも寒さもなかなかきついものがあったけど、パレシュタインのコンサートに行ってきました。

開演の20分前に入場しましたが、その時にはすでにパレシュタインはピアノのおいてある自分のスペースにお出ましで、片手に持つビデオカメラを客席に向けた状態のまま、とてもグルービーな感じで体を揺らしておられました。

その際、バックグラウンドに流れる音源に耳を澄ましていると、どうも日本のアダルトビデオからのサンプリングだったみたいで、女の子の喘ぎ声がずーっと会場に響きわたってました。

パレシュタインさん、なかなかお茶目というか、破天荒というか。はたまたじつはダメおじさんなのかもしれないと思った。

本人のアナウンスを待つまでもなく、それが彼の初来日だったのだが、それを"virgin”という言葉で表現。うーむ、ますますセクシュアルなテーマが横溢しはじめた。

で、いよいよ演奏開始。二度、三度などだけの単純な構成が待っているのだと予想していたけれど、それは良い意味で裏切られて、もっと複雑な和音で、しかも錯綜するリズムでもって構築されているので、生で聴いてみると(どうせエフェクトの力が大きく物を言っているコンサートではあるが)4,500円というチケットの値段はぼったくりではないなと判断するものの、やはりセクシュアルなテーマがあるな、と。

つまり、右手と左手で交互に鍵盤をアタックすることで発せられる音は、まさにセクシュアルな行為そのものを連想させてはいないだろうか。公演中の照明もずっと血のような赤で固定されており、バージンがバージンでなくなるその瞬間にボクは居合わせてしまったような気分だ。

で、コンサートのbefore/afterでパレシュタイン評価が変わったかどうか――変わらなかった。

無限に左右の手で一定のリズムを刻むのはしんどいことで、それなりの訓練も要したこととわかってはいるものの、その割には作品としてのインパクトに欠ける。ピアニストとしてもっと凄まじいヤツがいるだろうと考えたくなるし、実際いるだろうと思う。この30年以上、スタイルに変遷があったということもあるわけでもなさそうだし、音楽の根底を揺さぶってしまうようなパワー自体はまったく感じられなかった。どちらかというと、いわゆるアメリカのミニマリストという流れにうまく乗って来れただけラッキーなミュージシャンという風にボクには映った。