綿内克幸ライブのこと

ちょっと懐かしい体験。

8月22日。綿内克幸ライブ@赤坂グラフィティ。最後に綿内ライブを観たのは4枚目のWildberry Pieのレコ発ワンマン以来なので、10数年前のこと。この頃は、最近上映された某映画の背景になっているような渋谷系の音楽が一番元気があって、音楽的には浮かれていた時期だった。その反面、ポップミュージックの競争が激化していた時期でもあったように思う。

綿内さんのことに関しては、随分前にこのブログ上で書いたことがある。それをきっかけにして、以来ライブに行けるチャンスをうかがっていた。

相変わらずの歌いっぷりだった。というか、歌い方をよく知っている人なんだなと思った。(話が飛んじゃうけど)オリンピック中継で各キー局が採用したバンドの中には、情念をたっぷりと込めて、ジメジメとした歌い上げ方をするやつがいる。こういう歌を聴くと、ヘドが出そうだ。綿内さんの歌い方は(声の質にも大きくかかわっていんだろうけど)、とてもカラッと、ドライめに歌っている。じゃぁ、趣のない、無機質な歌い方なのかっていうとそういうことは全くなく、こんな表現はコッ恥ずかしいのだが、彼なりのsoul感みたいなものが聴き取れる。こういう歌い手はそうそう存在しない。

ポップミュージックかぁ。考えたかによっては、使い古されたフレーズの繰り返しであり、前進せず、保守的で、つまらない。事実、世の中のほとんどのバンドはそんなものだと思う。どうしてこのフレーズがこの曲の中で必要なのか? という問いを突きつけられたら困惑の表情を浮かべそうなバンドだらけだ。みんなと同じようなフレーズを使用していても、曲をどう構築していくかということに関して無防備でデザインのないバンドが跡を絶たない。

綿内さんは、その点において格闘したと/していると思う。よくできた曲なのだ。サロンミュージックとかAsa-Chungと一緒にやっていた頃、洋楽のコピーをシングルのカップリングとして公表したのを思い出す。ヘタな曲を書くやつは、こんなステップは踏めない。自分の曲が聴き劣りしちゃうもの。洋楽コピーをカップリングで採用できたのも、良い楽曲があってのこと。洋楽のコピーは、そんな綿内さんの曲の良さを戦略的に印象づけるためだったのではないかと勘ぐったりもする。

とグダグダ書いてしまったが、ライブ終演後初対面。人に声をかけるのがとても苦手なボクは、緊張で汗が出てしまうくらいで、サインをもらったこと、握手したこと以外は記憶がぶっ飛んでます。でも、うれしかった。素直に。

このCDは、3枚目Tearsの頃のワンマンライブで、会場内でのみ配布されていたもの。こんなものを持っていると、年齢がバレそうだ。インプロとかノイズとかミニマルとか一切出没しないライブは久々だったが、ポップミュージックのいろんなことを考えたり思い出したりするいい機会だった。