卒業生に向けて

ボクは川越市にある学校に5年間勤めてきたのだけれど、この春でその学校を去ることになりました。決してまともなことができたとは思ってないけれど、それでもつき合ってくれた皆さん、どうもありがとう。飽きっぽいボクが一か所に5年間も奉職できるとは、自分でもびっくりだ。

2002年から通い始めたと思うのだけれど、最初の頃はまだ学生気分が半分抜けないような状態で、授業という授業がまるで「ぷっ」スマみたいにグデングデンだったよなぁ。しかも思い上がりが少しあったためか、高校の教師の英語力なんてたかが知れたもんだなんて考えてたし(この考えは今でも多少真なりと思ってるけど)、高校生なんてガキじゃんみたいな思い込みがあったものだから(これもまた真なりと未だに思ってるけど)、結構いい加減なボクでした(これも未だに真だけど)。それでも数カ月経って気付いた。結構ナイスな生徒に囲まれているということに(なんかボクが生徒っていうコトバを使うのはとても気恥ずかしいのだけれど)。ボクと教室を共にした生徒は、もうすでに卒業してしまったか、この春卒業することになってるわけだけど、気の合う人たちとは、今でも連絡を取ってるし、付き合いがあったり、飲みに行ったりしてる。現在勤務している大学で、高校の卒業生がボクの授業に来てくれたりするケースもある。以下、イニシャルトークに登場するのは、みんなボクが大好きな教え子です(この教え子っていうのも、なんかしっくり来ないのだけれど)

まずN大学に行ってるK君、君はナイスだ。テストが全然できなくても氏名欄に書く自分の名前だけはしっかり書いてた。テストの出来がひどいと大抵の場合、自分の名前さえグッチャグチャな書き方をするもんだけど、君は違う。きっと自分のことを大切にできるんだな。ボクにはできないことだよ;ボクは自分のことをあまりポジティブに捉えられないから。あと、人なつっこいところとか。ボク、そういうのすっかり失ってしまったなぁ。

Y大のS君。チャイナがアメリカで死んで羅針盤が解散してしまって、あと自分とこのバンドで忙しくなったがためか、最近ご無沙汰気味になってるけれど。たぶんS君とはやっぱり羅針盤から接点がグンとできたような気がする。S君の聴覚は高校生にしては卓越してたと思うよ。ある意味、高校生の時の自分をみているようだった(人のことを出しにして自画自賛してるようだが)。音楽的には我々はマイノリティーだから話があったのだろうか、情報交換も頻繁に出来たし。ただ一つ問題は、いまS君がはまってる種類のジャズは、ボクは余り好かないということか(音楽史における意義が、本人たちーーつまりKとかOとかーーが言うほどの意義が認められないし、あのジャンルは凄く風通しが悪いと思ってしまうのよ...あ、あと、ボネガットとか、レウ゛ィ=ストロースとかのパクリが酷い)。まぁ、そんなことはどうでもいいや。ちなみにボクはいま、(アフロ)アメリカンでもフランスでもなく、もちろん北欧でもない、でも実は伝統的に優れたジャズで有名な地域のジャズを聴いてますよ。でも、教えにゃ〜い。

K大のS君とG大(ということはボクの後輩でもある)のY君。君たちは、血液型が共にAB型であるがためか、キャラの揃い方がおかしかった。クラスでたった2人のAB型が、仲良く机をくっ付けて勉強してるんだもん。AB型の、愛の流刑地みたいだった。そういえばこんな会話を思い出した。

   S:「Yがボクのことウザイっていいます」
   ボク:「そのうちお前は顔がウザイとか言われるよ」

で、このあとの数十分、Sはずっと机に突っ伏してた。傷つけたかなと思ってボクはSに謝った(たぶん授業後)、こんなことで傷付くなんて怪しいなと思いつつ。で、この翌日、Sは入院した。体の内臓のどっかに穴が空いてしまったのが原因だけど、入院したのはボクにせいにされた。穴を開けたのはボクだと、みんなに冗談半分に責められた。自分のあんな発言をフォローするつもりはないが、今のSは、とてもかわいい子になりました(Yはもう、ですね、当時からイケメンで通しまくってますから。ちゃんと知ってます)。今でも連絡を取り合ってることだと思うけど、飲みが依然として計画倒れに終わってしまってるのが残念だ(ボクを含めて旅行に行こうという話まであった)。そうそう、君たちが受験直前に突然電話してくるからビックリしたのを、今でもよく覚えてる。こういうサプライズはホントに嬉しかった。そういえば、君たちが受験生のとき、ボクも他大学の大学院を目指す受験生で、最後の授業でボク、半ベソになってしまったよ。恥ずかしいなぁ、今思えば。君たちの置かれていた境遇が身に染みて感ぜられてしまったものだから(今は超鈍感だけど)。

R大のK君、X大のAなど、Nクラスの大勢。たぶん卒業の中で、ボクは君たちと一番飲んでる。ここはナルシストで恐らく一番の美形であるKの企画力に敬意を表するよ。この学年はそろそろ、大学卒業後の進路について考える段階にまで達したりして、自分が年を取ってしまったことを痛感してしまうのだけど。まぁ、君たちとはいずれまた飲み会がありそうだから、ここでは多言を避けるよ。

あとはそろそろ卒業する火星人か。君はホントにエロい。ボクの性感帯という性感帯をすべてーー首筋や乳首、股間やケツに至るフルコースでーーコイツに触られた、しかも公然と。その度にボクは感じてるフリをしてきたけど、まったく冗談じゃない。もし永遠に触り続けたいなら、もっとテクを上げてから来やがれ。しかし、この学年はボクが唯一3年間全て担当できた学年だった。それだけにいろいろと思い出も思い入れもある。どう考えても多行動性症候群のやつとか、萌えてるキモいのとか、引きこもり気味のやつとか、急に意味不明な行動を起こして退学するやつとか。まぁ、長い付き合いができたので、ユニークさを一番味わえたなぁ、と。

長々書いてしまったけれど、ボクは今の職業を辞めるわけではありません。この仕事は続けます、ずっとーーただ場所が変わってしまうだけです。あの職場で働くことは、決していいことづくめ、とは言えなかった。仕事にやりがいを見失い、ただただ精神的に辛い時期もあったりした。ウザいしアホな教員もいるし。でもボクのやってることは君たちとの関係において成立していることを考えると、実りある年月だったなと思うよ。この年月はボクにとって今後も続くボクの仕事の糧になってます。どうもありがとう。