8日目

To Rococo Rotのギグへは友達と行った。ただの友達ではなく、ボクがゴールドスミスにいたときの友達である。ゴールドスミスを去ってから、ロンドンに来たことは一度もないから、これは本当に7年ぶりの再会である。今回都合をつけてくれたのは2人だが、この2人はロンドンに未だにいることをボクは確実に知っていたから、再会しないかとEメールするにもとても気楽だった。

2人とも新聞社に勤めていたり、コンピューター関係の会社で働いていたりして、結構なキャリア路線をまっしぐら...かと思いきや、まったくフランクな雰囲気はまだ持ち合わせていた。

そんな私たちは、チャリングクロスの国鉄駅内で待ち合わせをして、The Mallに面したICAへ向かった。ボクが予めチケットを手配したからなのか、2人ともまたアルコール類の支払いをボクにさせてはくれなかった。グラスを片手に、今どうしているのだとか、あの時はどうだったとか、グラスゴーなどで撮影したあの写真、この写真がどうだとか、話は意外につきなかった。

夜7時半に始まる予定のTo Rococo Rotのライブがなかなか始まらないから(開始時間の遅れなんて珍しいものではないんだけどね)、ちょっとしびれを切らしてしまったが、現れましたよ、3人のドイツのエレクトロニカ野郎たちが。

適当にギャグを織り交ぜながら行われたライブは、ICAという場所のわりにはとんがった雰囲気のものではなかったが、それでも十分ボクでも楽しめるものだった。エレクトロニカと言いつつも、どこかでアコースティックな部分を残しているのがこのトリオの面白いところだろうか。完全にコンピューター化された音ではなくて、ベースやドラムといった生音とエレクトロニックな機械がどのようにして絡まることができるのか、なんてことに興味のある人はTo Rococo Rotは必見かもしれない。また多少の実験性を持ちながら、ある種の(ステレオラブとかハイラマズがはやった時に使用されていた、という意味での)空間的な広がりを持った音響性を存分に発揮させながら醸し出されるグルーブ感というのも、ボクはあまり経験したことがない。とても興味深いライブだったと思う(といいつつ、ボクはあまりエレクトロニカとは縁がないんですが、これは別にボクがエレクトロニカに興味がないということではないんです。これまでもずっと『ワイアー』誌のエレクトロニカのレビューは見てきています。ただ単に、これまできっかけが全く作れなかった、どっから入っていけばいいのか分からなかったというだけのことです。今回のTo Rococo Rotのライブでせっかくエレクトロニカへ突入するきっかけを得ることができたので、今後エレクトロニカのアリ地獄というドツボにはまってしまうかも知れません)。