山本精一、埋火ライブ@スターパインズ・カフェ

行ってきました。山本精一、埋火のライブ。恐らく埋火を好きになってしまうだろう大学院の後輩と共に。

最初に登場したのは山本精一須原敬三の、ギターとベースだけのセッション(この形態の山本精一は、ボクにとっては初めてでした。来月もこの2人でライブがあるみたいです)。始めの2、3曲を歌う山本精一の歌は、いままでにない脱力気味で、本人もこれではいかんと方向性を改め、その後はいつもどおりの歌い方に修正する。どうせだったら、そのやる気なさ100%でやり抜いてしってもよかったのに。

途中からドラムの山本達久が登場。ここからボクはヤバくなった。ドラムが登場するなり、山本精一がいうのだ。ここからは羅針盤みたいな音になります、と。

チャイナがこの世を去って3年が経過する。その後、山本精一は、少なくともボクが観たライブでは、羅針盤のことを一切言及せずにいた。ボクはそれを当然のこととして捉えていた。以前『ゆん』のサイン会に行ったときも、羅針盤の頃からファンになりましたなんて、ボクはとても言う気になれなかった。だって、チャイナの死は、ボクにも重たいできごとだったし、当然本人がその重さをいちばん痛感しているにちがいないと思っていたからだ。その重たさをいちばん痛感したはずの本人が、羅針盤みたいな音になりますと言ったのだ。

3人での演奏が始まってからしばらく、恥ずかしいはなしだけれど、涙をこらえようにもこらえ切れなかった。堪らなかった。羅針盤の音が持つひとつの顔ーーテンポのゆるい、ダウンな感じ――が、よみがえってしまったのだ。3年前、同じ会場でやってた羅針盤のライブも同時に思い出してしまった。ボクの印象だけのはなしだけど、山本達久のドラムは、チャイナが好んで使っていた(とボクが思っている)フレーズを意識しているに違いなかった。

山本精一はきっと、チャイナの死を乗り越えるべく、その後も音楽をやってきたのだと思うけれど、昨夜のライブはその証だったのだと思っている。とはいえ、羅針盤の楽曲ばかりは、メニューには加わっていなかった。羅針盤の楽曲を歌う山本精一を待っているのではない。そうではなくて、チャイナの死後も、音楽をやり続けている山本精一を見てると、いろんな思いがこみ上がってきた。

で、埋火はもちろん初めて生で観れたわけですが、とても自由奔放というか、伸びやかな感じの見汐(vo, g)、それから志賀(dr, cho)の2人に、サポートで須原敬三がベースで参加。見汐はオモローですよ。登場するなり、クルクル回りながら立ち位置にはいるし、チューニングの最中は、(どうもシールドを外して、ギターをチューナーにわざわざつないだりしてた様子だ)、ステージの地べたにすわってしまうし。それでもかなり緊張していたみたいですけどね。志賀は、ただただそこらへんの女の子って感じですし。

いやでも、このバンドは凄みがあります。楽曲の面からしても、近年のバンドの中ではまれに見る豊かさです。楽曲の表情に豊かさがあります。そんなもんで、埋火はいろんなジャンルの音楽を聴いてはきちんと消化してきたんだろうなぁと思わずにはいられません。ヴォーカルの質は、かなり個人的な印象に過ぎませんが、小島麻由美を思い出させるものがあります。ファルセットが素晴らしいです。ちょっとエロな感じもあり、端正でみずみずしい印象もあります。

もう、昨年末購入したCDにひき続き、これを買わずにはいられませんでした。

恋に関するいくつかのフィルム

恋に関するいくつかのフィルム

で、最後に最近リイシューされた山本精一著『ギンガ』にサインをしてもらいまして、こんな感じでした。

うーん、今回のサインはとてもParaっぽいですなぁ。アブストラクトですよ。