血と汗と、精液の臭い

遠藤ミチロウ
山本精一+Chaos Jockey
イーヨ・イディオット
久土’N’茶谷

下北沢ベースメント・バーのライブに行った。なぜかこの日は観客の中にも大勢のミュージシャンがいた模様。Core of Bellsとか。Joan of Arc(だっけ???)とか。MOSTのベーシストとか。まぁ出演メンバーと何らかのつながりのありそうな人たちだらけってことだけど。

遠藤ミチロウはステージに上がるたびにギターの弦を切る。普通のいいオッサンが歌ってはまったく様にならない曲でも、彼みたいなオッサンだと違和感がない。このオッサンの凄さは激しいエロ根性で、射精を原爆にたとえていた。変な言い方だけど、季節的にも時事ネタとしも最高。ギターの弾き方の激しさと性的な衝動が比例しているってことか。それにしても、彼が絶叫ボイスにエコーかけるの、そこだけなんか変な技術的な存在を感じてしまって、萎えるボク。ギターも絶叫もストレートにレッツ・ゴーとは行かないのか。

山本精一+Chaos Jockeyはライブで見たのは2度目。1回目は高円寺のUFO Clubで、確か去年の今頃のこと。最初は山本精一だけ登場し、歌い始めた。曲目はほとんど『なぞなぞ』からの選曲だった。一部出どころのわからない曲があった。アルバム『なぞなぞ』からの選曲というのは、約1か月後に控えたうたものの予行練習的な意味合いなんだろうか(このチケットはもう買いました)。『なぞなぞ』はアコースティックギターに併せて歌ったものだったけれど、今回のステージはエレキギターで。だから、演奏のアプローチも違うし、歌い方もいわゆるフラット唱法とも微妙に違う感じだった。ギターは『なぞなぞ』の面影ほとんどなく、どちらかというとフリー・ジャズを演奏するときの感じにずっと近い。ただもうマーシャルのアンプで遠慮がないからやりたい放題。ファズやらディレイやら歪み系のエフェクターを、シューゲーのようにかけまくっていた(今日は最前列でみたので足の動きもばっちり拝みました)。歌と演奏がもう完全に乖離しちゃってる状態。で、途中でノイズをガーンと始めたころに茶谷が登場。この頃には山本精一は狂ってしまっています。譜面の紙は、譜面台から落ちて床にとっ散らかるわ、座ってたイスはけ飛ばすわ...もうこの辺はボクもあんまり記憶が無い。山本精一は絶叫してるし、ボクも絶叫してるし。歌と音とノイズとが住み分けできている楽曲というよりは、3つの要素がせめぎあってる感じ。そこに茶谷のドラムが食い込んでくるのだけれど、このドラムが異様な安定感をもって執拗に、強靭に同じリズムを繰り返してくる。こういうサイケ感もあるのか。でも、やってる本人たちが一番サイケを感じれるんだよなぁ。

イーヨ・イディオットはどうでもイーヨ・イディオット。あんまり書きたくない。ギターがツインでいるんだけれど、噛み合ってないじゃん。なんだ、あのチグハグ感??? ベースとドラム以外は本当にどうでもいい。ボーカルの女の子がいるのだが、最悪だ。なんだ、あの不思議系キャラは??? しかも彼女がかがんだら、ミュージシャンみんなもかがんじゃうみたいな、変な演劇性。君が失せなさい。フロア最前列の客の頭をポンポン叩いたり、フロアのまん中空けて下さい、とかいって降りてきては(十戒のあの感じ)、たとえ客が嫌がったとしてもフォークダンスみたいなものを一緒に踊らされるはめにあわせるし。むかつく。しかし、ジャズ系のドラマーっていうのはスネアにしろハイハットにしろ撫でるように音を出すのな。ヌルイなぁ、あーゆー叩き方。

久土'N'茶谷は初めて見たが、あんなに男臭いバンドを久々に味わった感じだ。この両者は山本精一PHEWも加入しているMOSTのメンバーってことだが、特に山本久土が臭い、もちろんいい意味でだが。久土は顔も長いし髪も長い。そのくせ顔の表情が、歌舞伎役者みたいに、まぁ七変化するわするわ。口なんてヘの字なんてもんじゃない。ステージ映えするのは間違いないが、夏には観たくない(MOSTの時に熱いギタリストだなぁとは思ってたけど)。しかも、声もしつこい、もちろんいい意味でだが。久土’N’茶谷としての楽曲はないみたいで、ほとんどカバーものだった。要は、夏のクソ暑いときにクソ熱いバンドを見てしまったということ。で、夏はいろいろ臭ってくる季節でしょう? 男臭ってやつね。血と汗と精液の臭いがいっぺんに漂ってくる感じ。それが久土’N’茶谷

で、アンコールに応じ、この2人に遠藤ミチロウ加わって登場。何曲かを3人で演奏ということになった。遠藤ミチロウが最初のステージでやらなかった温泉ファックを3人で大絶唱。ギターの弦を切ってしまった遠藤ミチロウが、「(プラグを)抜いていいですか?」という。山本久土は「抜いちゃってください!!!」と絶叫して笑みを浮かべる。

やっぱり血と汗と精液の臭いのする演奏だった。