6日目

予告通りEmbankmentのTemple Pierで行われたBoat-tingというイベントへ行きました。このイベントは、インプロとかエレクトロニカの音楽を中心に、月に2、3回のペースで開催されているらしい。彼ら曰く、ロンドンで唯一この手の音楽が聴けるイベントらしいのだが、本当にそうなんだろうか。他にもロンドンにはあるだろう、この手のハコは。

ま、そんなことはともかく、18日(月)のラインアップは以下の通り。
Sharon Gal (v)
John Edwards (b)

Bonnie McGrath (poetry)

Mark Sanders (dr)
Colin Somervell (b)
Barry Edwards (g)

Alex Ward (clarinet)
Steve Beresford (electronics)

会場のことから。これはテムズ川に停泊している船の一室を会場にしていて、小型の船舶が通過するだけでもかなり揺れる、船が底から軋む声をあげて揺れる。それに加えて、トップバッターだったSharonのvocalisationが不気味なものだから、最初の印象は、ボク生きて帰れるのだろうか、だった。ある意味、インプロとか前衛作品にありがちな作風だったかもしれないけれど、そこはうねるウッドベースがいい効果を上げていて、20分の演奏時間はかえって短く感じられるくらいだった。

詩の朗読は、自らのアフロ系のアイデンティティーとしての思いを込めに込めまくったもの。移民に厳しい態度を最近ことさら取るようになったイギリス政府、人間をなにげなくコントロールしてしまう消費生活やメディアのあり方を厳しく非難する内容。それでも、グルーブに乗りきった朗読だったと思う。

次のバンドだが、Mark Sandersというドラマーに釘付けになってしまった。彼のドラムは正確だし、パワーはあるし、そしてなによりもとても器用である。各ドラムのパーツをあれほどまでに多彩に楽器として音を鳴らせる人をボクは初めて経験できた。日本にはあんなドラマーはいません、断言します。このバンドのCDはリリースされてはいないのかと気になって、終演後カウンターへ行ってみたが、無いらしい。ただ持ってきてなかっただけならちょっとは救われる気もするのだが。

最後はBeresford。どこかで見たことのある顔だなぁと思っていたら、思い出した。彼のことは『ワイアー』誌で見たことあるんだった。まさかこんな形でお目にかかれるとは全く想像できなかった。エレクトロニックスの扱い方がすごく繊細な人だなぁ、というのがまず感じられたこと。といっても、テーブルの上には客席からは数えられないくらいたくさんの機材が並べてあったし、出す音も際限がないのではないか、と思えるくらいだった。詩の朗読にたとえたら、Sachiko Mなんて棒読みみたいなものだけど、Beresfordのはそれとは異なり実に表情豊かだった。30分に満たない演奏だったが、それでも十分満足できる内容だった。